昭和46年 「宇宙猿人ゴリ」「帰ってきたウルトラマン」「仮面ライダー」と久々に新作が登場しはじめた特撮テレビ映画は、スポーツ根性物一色だった児童テレビ作品の様相を変え、しだいに第二期怪獣ブーム、変身ヒーローの時代へとその歩みを進めていた。
そんな中で、「仮面ライダー」を生んだ東映・石森章太郎チームは、また新たな作品に乗り出す。
それは、石森章太郎が「千の目先生」や幾多の少女まんがで描いていた女性を主人公とした物語のシリーズであった。
その名を、「好き!すき!!魔女先生」、昭和46年10月から翌昭和47年3月までという、いよいよ盛りあがる変身ヒーロー時代のその幕開きの時代であった
まずは、恒例の第一話を紹介して、その基本設定を見ていただこう。
第一話
「決闘さくら(ママ)ヶ丘」
(脚本・辻真先、監督・山田稔、昭和46年10月3日放映)
朝早く、団地のそばに止めてある乗用車の数々
その車体にペンキをぬっている少年たち、竜村正夫、通称タツノオトシゴ(藤江喜幸)ひきいるわんぱく坊主の三人である。
満足のできで、行こうとする三人の前に立って笑っている一人の女性
年のころははたちかというミニスカートの美人である。彼女は、「ちょっと貸してごらん」とペンキのバケツとハケを取ると、驚く三人を尻目に、車を完全にペンキでぬりあげてしまった。
「いたずらするんなら、徹底的におやんなさい(笑って、ペンキのハケで三人の顔をなでる)君たち、なかなかかわいいわよ(笑)」
三人は、お互いの顔を見て爆笑する。
その際に、彼女は左手を上げてパッと姿を消し(!)、車はペンキもどこへやら、ピカピカの元通りになってしまった。
三人が狐につままれたような気持ちでいた時、さき程の女性は、団地の屋上で下を見下ろしていたのである!!
「(手帳をよむ)竜村正夫、通称タツノオトシゴ。学園名誉理事長のセガレにして、ハシにもフォークにもかからないガキ、と。さすがバルの調査は性格だわ(笑)」と、突然姿を表わすバル。
「えへん。あったりまえじゃ。こうみえても、宇宙連合アンドロメダ星雲支部直属平和監視員である姫のアシスタントですわい。バイチョ」
バルはたちまち姿を消し、あきれる姫
このバルが姫とよぶ女性こそ、この物語の主人公・月ひかる(菊容子)であった。
彼女は、アンドロメダ星雲から派遣された平和監視員であり、辺境の星・地球の調査、及び監視が彼女の役割だったのである。
彼女は、今日から地球人として、東西学園商学部で5年生のクラスを受け持つことになっていたのである・・・。
学校へやってきたひかるは、さっそく校長先生(潮万太郎)に受け持ちの5年D組へと連れていかれた。
美人の女先生が現れて、クラスの皆は(特にタツノオトシゴたち朝のわんぱく坊主は)びっくりするやらうれしいやら。
ひかる「今日から、この東西学園に仲間入りした月ひかるです。先生だなんて固苦しく考えないで、皆さんのお友達にしてくださいね(歓声をあげるクラスの皆)」
「先生、年いくつ?」
「さぁ、いくつにしようかな?」
という生徒とひかるのやりとりに、校長先生と教頭先生(牧冬吉)は、しぶーい顔。
校長「こびてはいかん・・・先生には威厳が必要です」
教頭「(校長にこびて)そうでございます。若いだけに経験不足のようでございますな。
今後、私がビシビシと・・・」
クラスの皆から質問が乱れとぶ!!
「先生に質問、サイズ教えて!」
「その服いくら?」
「恋人いますか?」
さわぐ皆をピーッと指笛をふいて、だまらせるひかる(校長、教頭はびっくり仰天!!なんたるオテンバ)
ひかる「質問に答えるわ。年齢21歳。バスト87、ウェスト61、ヒップ91.このドレスはバーゲンで3500円、それを自分で仕立て直したの。恋人はただ今、募集中!!」
体操の時間、鉄棒では大車輪、すもうでは正夫をなげとばし、美人でやさしいひかる先生に、クラスの皆はもうご機嫌であった
すもうに負けたことでクラスの皆にひやかされるタツノオトシゴこと正夫を除いては・・・。
くさる正夫は、クラス委員のガリ勉・田辺進(矢崎知紀)のめがねをとって、返してほしけりゃ決闘しろ、と進むにつめよった。
それを聞いて、なんと喜ぶひかる先生。
ひかる「まぁ、決闘だなんて、かっこ良いじゃない!!」
進くんが何を言ってもひかる先生は知らんぷり、「決闘が決まったら教えてね」という始末であった。
その夜、進はクラスの友達はる子にうながされて、ひかる先生の家へとやってきた。
はる子はめがねのことで、先生に抗議するつもりだったのだ。
竹やぶ町八百八十八番地はこの辺のはずだけど、回りは一面うっそうとした竹の林、家なんか一軒もない
おかしいなあと二人が考えていた時、その後ろの竹林がするすると音もなく開き、一軒の家がその先に現れたのである。
おばあさんとおじいさんに出迎えられる進とはる子。
おばあさんによると、先生は二人を待っているという。笑うおじいさん。
「先生がうわさしとったよ。D組きっての秀才だってな。だが、おしいことに頭でっかちだってな」、図星をいわれて進むとはる子も思わず笑ってしまう。
二人は、奥のはなれへと通され、ひかるに出迎えられる。
着物姿のひかる先生は、二人の用事をどうやらお見通しらしい・・・。
はる子「先生、なぜ放っとくんですか」
ひかる「めがねのこと?」
はる子「もちろんだわ。進くん、とっても困ってるのに!」
ひかる「さあ、なぜかしら?きみにはわかってるんじゃない?」
はる子「ワカリマセン!あんな奴、先生がやっつけてくれりゃいいんです。すもうのときみたいに!」
ひかる「進くん。きみもそう思ってる?先生がしかれば良いんだ。自分たちはだまって見物してるだけでいいんだって」
進「(うなだれて)だ、だけど僕、弱虫だもの。とってもケンカに勝つなんて・・・。」
ひかる「弱虫だなんて、自分でそう思ってるだけでしょう」
進「だけど、僕、にぶいんだ。キャッチボールだって、鉄棒だって」
ひかる「すばしっこいのが強いとは限らないわ。たとえば、きみ、クラス委員だから、皆に号令をかけるでしよう」
進「(キョトンと)はい、たまには」
ひかる「だったら気合術ができるわ、きっと!」
進「キアイ!?」
ひかる「そうよ。やってごらんなさい。お腹の底に力をこめて」
進「(笑って)恥ずかしいや」
ひかる「バカ!(びっくりする進とはる子。ひかるの言葉は真剣だ)正しいことを主張するのに、ケンカもできない今のきみの方がよっぽど恥ずかしいわ!」
進とはる子は一言もない。
ひかる「立って。(ピョコンと立つ進)足を開く。目をつぶる。お腹の底に力をこめて、自分がライオンか虎になったつもりで」
進「エーーイ!」
ひかる「力がたりナーイ」
進「エーーイ!!」
庭に出て、叫び続ける進。しだいに大きくなっていく進の声。
ひかる「やっと羊ぐらいになったわね・・・(叫ぶ進。応援するはる子)狼ぐらいになったわ。もうひといき!」
ひかるは、左手を上げると、「ムーンライトパワー」とつぶやいた。
指輪が光を放ち、自分は虎だと思う進の声は、竹の林をバキバキと倒してしまったのである。大喜びのはる子。
倒れた竹を見て、目を丸くしている進。
進「これ、僕が倒したの!?」
はる子「そうよ。進くんの気合で、バサバサッと・・・」
ひかる「進くん、きみ、強くなったのよ(笑)」
進「先生、本当!?(うなずくひかる)先生、明日ぼくはタツノオトシゴと決闘します!!」
進むとはる子が帰り、バルはあんなことにムーンライト・リングを使ってはいかんとお小言。
バルに言われ、ひかるは月にかくしてある母船からリングのエネルギーをチャージするのだった。
美しい月を見つめるひかる。
ひかる「美しい月だこと。地球では中秋の名月っていうんですって・・・」
バル「くれぐれも忘れんようにな。リングの力は平和監視員の身を守るもの。地球人を甘やかすためではない」
ひかる「地球に来てからムクレっぱなしね、バル。でもそこがバルのかわいいとこだけど」
翌日、正夫と進は、小学校OBの黒木先輩(白木みのる)やひかる先生、クラスメートの前で決闘することになった」
くんずほぐれつの二人。
しかし、圧倒的にタツノオトシゴの有勢である
皆は、先生に止めてというが、ひかるは、進に自分でなんとか解決させるつもりであった・・・。
そこへ仮免の運転で、旗野先生をコーチに、近づいてくる校長先生の車。
旗野先生と校長先生はタツノオトシゴがケンカしているのに気がついた。
ひかるは、ムーンライト・リングの力で、車を空へ飛ばしたり、小さくしてしまったりで、校長先生たちはキリキリマイ
その間に、進はタツノオトシゴにしがみつき、遂にタツノオトシゴは、ねをあげてしまったのである
進むを祝福するクラスの皆。進も正夫もボロボロであった。
ひかる「進くん、よくやったわ」
進「先生、ありがとう。皆、ありがとう。オトシゴ、ありがとう。きみのおかげでぼく、強くなれたんだよ」
正夫「変なこと言うなよ」
ひかる「(笑って)変じゃないわ、オトシゴくん。あなたね、自分でも気づかないうちに、田辺くんの頭でかっち直してくれたの。先生のお手伝いをしてくれたんだわ」
正夫「そんなこと言ったらイタズラできなくなっちゃうよ・・・」
進「やるならやれよ。オレが止めるから」
正夫「バカやろう!」
笑いあう皆。校長先生が来るけど、ケンカではなくじゃれてただけで、きたえてもらったんですという進。
正夫は逆だよ、と怒る始末・・・という訳で、月先生の頭でっかちくん激励作戦は見事効を奏したのでありました。
(第一話了)
「好き!すき!!魔女先生」は第一話だけでなく、中半に至るまで、平和監視員という部分を前面に出す作品は、あまり出現しなかった。
この物語のポイントが、それだけでも月ひかると生徒たちの心の交流をメインにおいていることが分かると思う。
事実、何本かの作品をぬいては、ごく日常的な学校を舞台とした物語の数々だったのである。
例えば、第二話「トンテンカンとんちんかん」(脚本・辻真先/監督・折田至)では、旗野先生のクラスの遅刻常習犯・小島タケシ(川口英樹)に、旗野先生はカンカン。
バットをふりまわして、かくれてクラスに入ろうとしたタケシにカツを入れた。
遅刻というそれ自体よりも、それをごまかそうとするタケシの根性が旗野先生には、何よりもなさけなかったからだ。
タケシの家は、お父さんが亡くなっていて、お母さんが働きに出ているため、弟や妹を学校へ行かせてから、食卓の片付けや部屋の整理をして出てくるので、どうしても遅くなりがちだったのだ。
しかし、その翌日、がんばって家を出たタケシは、ヤカンの火を消し忘れ、家が燃えてしまうのである・・・
旗野先生は、自分の責任だ、と給料の前借りを頼み、タケシの家を立て直そうとする。
波多野先生を平均敵地求人としてマークし始めていたひかるは、その行動を見守ることにした。
材料は武のお母さんが勤めていた建築屋さんが出してくれて、丁度タケシが作った模型通りの家を建てるという旗野先生。
なんとか日曜大工で、形だけはできるが、その夜、台風が東京を直撃する!
責任だからと、その夜、一人オンボロの家にとまりこむ旗野先生。
屋根からは水が漏り、窓が吹き飛び、必死にそれを押さえる旗野先生の奮戦
それを側にかくれてじっと見ている月ひかる
つぶやくひかる。
ひかる「旗野先生・・・単純だけど、がんばりや。最後までこっけいな程、責任をつらぬこうとする。
これが地球の人間なら、私たちも見直さなくては・・・」
ひかるは、リングのパワーを使い、模型を家の大きさまで巨大化させた!
気絶していた波多野先生も、武士たちも、翌日に、立派な家にびっくり仰天というお話など、典型的な物語りながら、登場人物の心の交流を描き、ラスト不思議なひかる先生を子供達が「かぐや姫先生」と叫ぶ幕切れなど、「好き!すき!!魔女先生」の典型の作品となりえていた。
このシリーズは、前半と後半で驚くべき物語の変化を見せるのだが、前半のいくつかの物語を紹介しておこう。
昆虫採集が自慢の正夫と植物採集が自慢の努は、クラスの中ではりあっていた。
正夫の昆虫採集は残酷だと非難していた努だが、ひかるが理科の時間、植物も泣いたり笑ったり生きているといったから、大ショック。
ひかる先生の家を、夜訪ねる努だが、その家のそばで、努は不思議なサボテンのような植物を発見した。
それを回りの土ごと家に持ち帰る努だが、その植物こそ、ひかる達の円盤が宇宙から運んできてしまった食肉植物ピラズモンだったのだ、というのが第3話「私を食べないで」(脚本・市川森一/監督・山田稔)、これは前半には珍しいSF編の一編であった。
学校へ来たクラス員の進は、寝ているばかり。お母さんが学校へ来て、進はひかる先生の出す宿題をやるために、この2日間徹夜している・・・と校長先生に訴えた。
しかし、光は宿題など、出してはいなかった。すべては、夜ねむると、夢の中でソクラテスのような男が進むを台に縛りつけ、その首を落とそうとする悪夢が原因であった。
その夢から逃れるために進は徹夜を続けていたのだというのが第4話「ソクラテス大いに怒る」(脚本・市川森一/監督・折田至)、実はこの物語、美術室のビーナスの石こう像を掃除中、進が壊し、それを隠していたため、一緒においてあったソクラテス像が自分をせめているように感じていたという話で、ビーナス像は、ひかるのムーンライト・パワーで復元するのが最後となっている。
これなどは、いかにも学校物にありそうな物語ではありませんか。
病院に入院していたとき、同質のお姉さんにハーモニカのオールド・ブラックジョーを教えてもらい、その曲が大好きな弘美。
ところがお母さんは回りへの体面でハーモニカをやめさせ、ピアノを習わせようとする。
そのお姉さんにオールド・ブラックジョーを聞いてもらいたいという弘美の願いを、ひかるがかなえてやろうとするのが第5話「いじっぱりハモニカさん」(脚本・辻真先/監督・山田稔)、この物語はテレビでハーモニカを吹かせるのだが、ラスト視聴者の私達には、そのお姉さんが今は亡くなっているというのが判り、不思議な余韻を生み出していた・・・。
つづく